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「おや、『風』の呪文だね……うぷ…」 シエスタによる公開屠殺を強制的に見せられて、今にもゲロを吐きそうな顔をしていたワルドが、 青い顔をしたまま呟いた。 未だに鉄錆にも似た異臭が漂う死地に、ばっさばっさと翼を羽ばたかせる音が響く。 どこかで聞いたことのある羽音だった。 「シルフィード……だったかしら」 名前はともかく、確かにそれはタバサの使い魔の風竜であった。 重なりかけた月を背景に、悠然と空に浮かぶ幻獣。 そのシルフィードが、何故この場にいるというのか。 ルイズの疑問に応えるように、風竜はゆっくりと地面に舞い降りた。 場に満ちる死臭が、人間の何倍もの嗅覚を誇る風竜の鼻を襲い、 シルフィードは実に嫌そうな顔できゅいきゅい鳴いた。 その風竜の背には、主人であるタバサの姿。 パジャマ姿のまま、本を読んでいる。 さっきシエスタを吹き飛ばしたのは、タバサの『風』魔法だったのだ。 (お姉さま、ここクサい! シルフィお鼻が曲がっちゃうのね! クサい! クサい! ク~サ~い!) (……我慢する) そのタバサの後ろから、炎のように真っ赤な髪の女性が機敏な動作で飛び降りて、髪をかき上げる。 キュルケであった。 憎きツェルプストー。 ルイズの生涯のライバルであった。 「いくら礼節を弁えない者相手とはいえ、やり過ぎでなくて、ヴァリエール?」 後ろでヨロヨロと立ち上がり、頭を振っているシエスタを横目で見ながら、ルイズは肩をすくめた。 「あんたの夜の情事よりは幾分穏やかだわ。 ……で、どうしてここにいるわけ?」 「ッッ! …………朝方、窓からあんたたちが馬に乗って出かけようとしてるもんだから、気になって後をつけたのよ」 柳眉を逆立てて、キュルケは言い放った。 本当は助けに来たつもりだったのだが、ルイズの嫌味に対する反発心から、 つい無難な理由を述べたのだった。 しかし、良い所を邪魔をされたとあって、ルイズの嫌味は歯止めがきかない。 ウンザリした顔で、シッシッと追い払う仕草をする。 「おととい来て下さらないかしら、マダム? 大事な大事な男娼達が、首を長くして待ってるわよ? あら失礼、長くしているのは首じゃなかったわね……オホホホホ」 ほくそ笑むルイズ。 仮にも十八の乙女に対してマダム呼ばわりである。 これには流石のキュルケも腹に据えかねたらしい。目つきが据わってきた。 「言ってくれるじゃない、『ゼロ』のクセに……」 「…………何ですって?」 「何よ!」 バチバチと火花を散らしながら睨み合う二人。 やがて、いつものように壮絶な罵りあいが始まるのであった。 売女! ナイムネ! 脂肪細胞の無駄遣い! 言ったわね!? 野蛮人! おチビ! 色狂い! 独り身! ツラに一発ぶち込むわよ!? ケツに一発食らわすわよ!? ………………………………… …………………………………。 あらかた罵倒のネタが出尽くしたところで、タバサが止めに入った。 彼女がその身長よりも大きな杖を振ると、二人の体が宙に浮かぶ。 "レビテーション"の魔法を使ったのだ。 「非常時」 ポツリと呟くタバサの言葉で冷静になったのか、二人は渋々矛を収めることにしたようだった。 大人しくなった二人を、タバサはゆっくりと地面に下ろす。 「……改めて聞くけど、どうしてあなたがここにいるの、ツェルプストー? 私たち、お忍びの仕事の最中なの」 「ふん、勘違いしないで。貴方を助けに来た訳じゃないの。 ……ねぇ?」 ルイズに対する渋い顔を一転、キュルケはしなをつくってワルドににじり寄った。 「おひげが素敵な紳士様。身を焦がすような情熱に興味はおあり?」 じりじりと近づいてくるキュルケを、しかし、ワルドは青い顔で押しやった。 「あら、どうして?」 「婚約者が勘違いしては困る。 それに……こんな場所で、そんな気にはとてもじゃないが……なれないな」 確かに、とキュルケは納得して頷いた。 辺り一面には、依然として濃厚な血の匂いが漂っている。 直ぐに危険な野獣が集まってくるだろう。 既に上空では、匂いに誘われてカラスやハゲタカが群を為し始めていた。 彼らは、地上にある今晩の食事をご所望であったが、シルフィードがいるために手が出せずにいた。 ギャアギャアという、彼等の愚痴にも似た叫び声が響くこの場所では、 とてもじゃあないがロマンチックな気分にはなれない。 ワルドの言うことは至極もっともであった。 そして、それにもましての驚愕の事実が、キュルケの興味を強く刺激していたのであった。 「なあに? ルイズ、あなた婚約者がいたの? よりにもよってあんたに?」 「いちゃ悪いの? それに、まだ私は結婚するって決めた訳じゃないわ」 驚天動地といった顔をするキュルケだが、以外や以外、ルイズはあんまり気にしていないようだった。 もっと顔を赤らめるなりして照れるかと思ったのにつまんない、とキュルケは思った。 最近のルイズは、やけに冷静……というより、冷徹なのだ。 さらには、以前はまだまだ希薄であったはずのルイズから感じられるオーラのようなものが、 洗練され、さらなる深みを見せているようにも思われた。 何というか、カリスマ? とでも言うのだろうか。キュルケはルイズから発せられるそれをうまく説明することが出来なかった。 ただ一つ明らかなのは、ルイズが本格的に変わり始めた原因はDIOにあるということであった。 今でこそ、短絡的な感情表現をしてくれることもあるが、それもいつまで続くのか分からない。 ルイズの行く末を案じるキュルケであったが、そんな彼女をよそに、 ルイズは運良く生き残った一人に尋問を開始することにした。 地面に情けなく横たわって気絶している男にルイズはドカドカと近寄り、容赦なく鳩尾を踏んづけた。 激しく咳き込みながら、男は意識を取り戻した。 ゆっくりと目を開いた男は、自分を見下ろしているルイズの姿を確認すると、 途端に取り乱した。 「た、助けて!! 許して! 俺はただ、雇われてただけなんだよぉ……!! 」 「ほらほら、五月蝿いわね……静かにしなさいよ、大人げない」 しかし、男は喚くのを止めない。それどころか、脇に立つシエスタの姿を目にするや、その叫び声を益々大きくしてゆくのであった。 ルイズは痛む頭に手をやり、ゆっくりと杖を取り出して男に突きつけた。 「黙れ」 首を吹っ飛ばされた仲間達の姿が、男の脳裏にフラッシュバックする。 男はピタッと静かになった。 「では、聞くわ。 あんたたち誰に雇われたの?」 「は、はい、ラ・ロシェールの酒場でメイジに雇われました……女です」 早くもアルビオンの貴族に気付かれたかと、ルイズは焦った。 しかし、思った通りこいつは唯の三下だ。 根掘り葉掘り聞いた所で、実りのある情報が得られる確率は絶望的といえた。 それでも、ルイズに対する恐怖からか、男の返事が素直そのものであったのが、唯一の救いだった。 余計な手間がかからずに済んだと思いつつ、ルイズは先ほどの戦闘で感じた疑問を男にぶつけた。 「じゃ次。 さっきの戦いで、どうして私だけ襲ったの?」 「雇い主にち、注文されたんでさぁ、へへ……。 緑色の髪をした、美人のメイジに言われたんです……。 桃色の髪をしたチビだけは絶対にこ、殺せって……。 胸がペッタンコだから、すぐ分かるって……。ヒヒヒ、本当にすぐ分かりましたよ」 「緑色? どっかで見たことあるような……。 それとあんた、一言多いわ。 こんど余計なこと言ったら、せっかく拾った命を無駄にすることになるわよ」 調子に乗りかけてニヤついていた男の顔が、再び凍り付いた。 ルイズはいったん振り返ってキュルケ達をチラリと見た後、男に向き直った。 「もう聞くことはないわ。あんたは用無し。 殺してやるつもりだったけど……フン、せいぜいキュルケに感謝しなさい」 どうやら、命だけは助けてやると言っているらしい。それを聞いた男の顔が少しだけ和らいだ。 希望に包まれ始めた男の顔は、ルイズにとって非常に神経に障るものであったが、この際我慢することにした。 何だかんだで自分はキュルケに弱い……この瞬間、ルイズはそのことを強く自覚した。 いずれは克服せねばならない課題だった。 そのためには理由を知る必要があったが、ルイズには何となくそれがわかっていた。 キュルケはルイズの姉に似ているのだ。 優しいカトレアに。厳しいエレオノールに。 そう考えてルイズは、ハッとなる。 基本的に姉には頭の上がらないルイズにとって、これはゆゆしき事態であった。 『ルイズは姉に頭が上がらない→キュルケは姉に似ている→ルイズはキュルケにも頭が上がらない』 こういうカラクリだから、キュルケはこれからのルイズにとって乗り越えねばならぬ障害足り得たということか。 ならば、ルイズの為すべきことは一つである。 キュルケを乗り越えるためには、まず二人の姉を…………。 自分は二人の姉を……どうするというのか。 そう考えるとモヤモヤしてくる自分の胸の内を誤魔化すように、ルイズは男を追い払った。 男は振り向くことなく駆け、やがてラ・ロシェールの夕闇に包まれていった。 「てっきり殺すと思ったが……慈悲深いじゃないか。 あのキュルケとやらに負い目を感じているのか?」 いちいち痛いところを突く使い魔だと、ルイズは思った。 人の心を纏う鎧の、ほんの僅かな隙間を縫って、中心に針を突き立ててくる。 ふてくされた顔で、ルイズは馬上のDIOを見上げた。 「……何なら、消してやろうか? 可愛い御主人様の為なら、はてさて……どうってことはない。遠慮するな」 DIOの悪魔の囁きである。 ここでYESと答えれば楽なのだろうが、ルイズは首を横に振った。 「いいえ、嬉しい申し出だけれど断るわ。 これは私とキュルケの……いえ、私だけの問題よ」 「そうか」 拍子抜けするほどあっさりした返事を残して、DIOはさっさとラ・ロシェールの街へと移動し始めた。 その後に、デルフリンガーを回収したシエスタがしずしずと付き従う。 だが、ルイズは遠ざかっていくDIOの馬を追いかけ、ひらりとその背に跨った。 突如として自分の後ろに飛び乗ってきたルイズに、DIOは振り向いた。 「私の馬、さっきの戦いで死んじゃったの。 だから、ラ・ロシェールまで乗せなさい」 そっぽを向いて一息に言い切ったルイズにDIOはニヤリと笑い、直ぐに前に向き直った。 DIOがルイズに見せた笑みは一瞬であったが、しかし、ルイズは見た。 DIOの目。 何もかもお見通しと言わんばかりのDIOの目は、確かにこう言っていた。 『キュルケを乗り越えるために、まず姉を殺せ』 殺す? 私が? エレオノール姉様と、カトレア姉様を? ………………………………。 ルイズは自分の杖をぎゅっと握り締めた。 両脇を峡谷に挟まれた、ラ・ロシェールの街の灯りが、怪しく一行を迎えていた。 ―――ルイズ一行、無事にラ・ロシェールへ。 to be continued……
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第一章 使い魔は暗殺者 中編 リゾットとルイズが歩いて城に戻ると、すでに次の授業は始まっていた。 ルイズは渋々ながら使い魔を引き連れて次の授業に出席しようとしたが、リゾットはそれを聞いてあっさりと首を振った。 「悪いが、仲間たちの様子を見に行きたい」 その言葉遣いにルイズはご主人様に対する礼儀がなってない! と叫んだが、リゾットは何処吹く風といった様子だったので、まあしょうがないわね、と許可を出した。 何しろ、これ以上遅れたら教師にどれだけ怒られるか分からない。 ルイズは近くを歩いていた黒髪のメイドに声を掛けると、リゾットを救護室まで案内することと寮の自分の部屋の場所を教えるように言った。 ルイズと同じ年頃のメイドはそれを礼儀正しく承ると、リゾットを連れて救護室へと向かった。 話は少し遡る。 まだリゾットとルイズが草原を歩いている頃、コルベールによって運ばれた六人のうちの一人が目を覚まそうとしていた。 トリステイン学院の救護室はかなり広い。 戦争が起きた場合、この学院も砦として活用されるので、大勢の兵士を収容するためなのだが、平和なときは無駄な広さである。 しかし、今はコルベールが連れてきた六人の奇妙な平民たちが眠っていた。普段使用しないベッドにもシーツを敷き、布団をかけて昏々と寝ている。 水のトライアングルメイジである治療師は全員に外傷が無いのを確認し、目が覚めたときの説明役のために椅子に座る。 地方の小貴族の三男坊だった彼は、一応貴族ではあるが、領土は持ってない。 領土がないということは、職が無いということなので、働かなければいけない。 けれど、この職が中々見つからない。実力の無いメイジだと門戸は狭いし、やっと就職できたとしても給料は安い。 そのせいで危険だけれども金になる傭兵や泥棒などになるメイジもいる。 国はそんなメイジを貴族の恥さらしと呼んで必死になってとっ捕まえようとしているが、そんなことをする前に給料上げた方がいいんじゃないのか、と彼は思っている。 ちなみに彼は水のトライアングルであったし、治癒魔法に優れていたのでけっこう門戸は広かった。 そんな中でこの学院の治療師を選んだのは年老いても出来そうな仕事だったからだ。それに、子供たちと触れ合う事も楽しかった。 そんな彼も六十の半ば。そろそろ退職時期かと考えていた。けれど後任の治療師が来ないので今に至る。 (オスマン学院長もそろそろ誰か採用してくれんかのー。この歳だと患者をベッドに寝かせるのも一苦労なんじゃ) コルベールが手伝ってくれたからどうにかなったものの、六十代の老人には少々骨の折れる仕事だった。 何しろ全員屈強な男たちだ。一人だけ女のような奴がいたが、しっかり筋肉はつけているようで、中々持ち上がらなかった。 (にしても、奇怪な格好だわ。最近の平民の間ではこんな服が流行っとるのかの。見たことの無い材質もあるようだし……。特にあの片目を隠すのは最先端流行ファッションとかいうやつかの?) 治療師は一番奥のベッドに寝ている男に視線を移す。 最初は女だと思った平民だ。 ちゃんと見ると男だと分かるのだが、他のがっしりとした骨格の男たちに囲まれると、アレ? となる。 奇妙な対比である。 しかし、彼らが運ばれてからすでに三十分ほど経過しているが、誰も起きない。 治療師は少し退屈してきたので、自室から本でも持って来ようかと腰を上げた。 と、そのとき、 「……う……うぅ……?」 眠っている一人が僅かな唸り声を上げた。 見れば一番奥のベッドで横になっていた妙な目隠しをつけた男がもぞもぞと動いている。 治療師は驚き、彼にしては早いスピードで側に近寄った。 「おお、目が覚めたかの?」 枕に顔を擦りつけ、ごにょごにょと何かを口にしている男に、治療師はそう尋ねた。 「…………ん? 何だ、ここは……。オレはいったい…………はっ、蛇だ! 蛇が!」 すると、声に反応して目を開けた男は突如として上体を起こして叫んだ。 治療師はそれを避けようとしてひっくり返りそうになったが、後ろの壁に手をついて何とか体を支える。 「お、落ち着きたまえ。ここに蛇は居らんよ。ここはトリステイン魔法学院の救護室じゃ」 「って、ここは駅じゃない? テルミニ駅にはこんな石で出来た部屋はないはずだ……。 ということは、何者かに運ばれたという事か? ブチャラティの奴らではないな……。 ボスの配下か?」 が、男は治療師の声が聞こえていなかったらしい。 ブツブツと独り言のような声で早口に何かを喋っていた。 治療師はこの平民が『サモン・サーヴァント』で呼び出されたことを思い出して、男の混乱に納得する。 そうして、もう一度声を掛けた。 「ここはトリステイン魔法学院だよ。 君たちは生徒の『サモン・サーヴァント』によって呼び出されたんだ。 ここまではミスタ・コルベールが魔法で運んできてくれたんだよ」 ぴくっ、と男の肩が揺れた。どうやら今度はちゃんと耳に届いたようだ。 治療師はこれで一安心と息を吐きかけて、 「トリステイン魔法学院? 『サモン・サーヴァント』? 魔法で運んだ? …………どういうことだ? 答えろ! お前は誰だ?!」 ぎょっとした。落ち着くどころか益々興奮した男が治療師の胸倉を掴んで喚く。 だらだらと汗を流して、眉は吊り上がり、目は爛々と輝き、唇の端は捲りあがっている。そのあまりの剣幕に治療師はひぃっと、小さく悲鳴を上げた。 怖すぎる。左目だけがこちらを睨んでいるのも怖い。 杖は職務机の脇に立てかけているので魔法を使うことも出来ない。 「答えろって言ってるだろ?! ここは……、ここは……、魔法が存在する世界なのかッ?!」 「…………………………………………………………………… ……………………は?」 ああ、わしの人生オワタと、心の中で始祖ブリミルに対する祈りの言葉を唱えていた治療師は、 続いてとても嬉しそうに発された間抜けな質問に、心底気の抜けた声を出した。 プロシュートはぼんやりとした気持ちでどこかに立っていた。どこかは分からない。 というより、足に何かが触れている感じがしない。 黒で塗りつぶされた空間の中に、曖昧な感覚のまま立ち尽くしていた。 自分は死んだはずだ。と、プロシュートは思った。 ブチャラティと戦い、列車の外に飛ばされ、ブチャラティの策略にはまり落とされた。 それでもペッシを援護するために車輪に捕まり、ザ・グレイトフル・デッドを使っていたが、 段々意識が薄れていきとうとう…………途切れた。 ――ペッシは娘を手に入れられたのだろうか? メローネとギアッチョはどうしているのだろうか? リゾットはボスを倒せたのだろうか? 残された仲間の事が気に掛かるが、プロシュートには確かめる術も無い。 ただ、この漆黒の闇に囲まれていることしか出来ない。 それにしても、ここはどこなのか。天国でも地獄でも無いことは確実だが。 死後の世界とはこういうものなのだろうか。 何もすることが無いので、プロシュートはこの場所について考える。 けれど、すぐに堂々巡りするだけだと気付いて、別のことを考えようとした瞬間、 ぐいっと何かに引かれる感触がした。 ――何だ? プロシュートは錆び付いた歯車のように働かない思考で呟いた。 その間にもプロシュートはぐいぐいと引っ張られていく。 上か下かは分からないが頭の方向へと、何かがプロシュートを運んでいくのを感じる。 それと同時にプロシュートを囲っていた闇が薄くなっていった。 頭上から光が射してきたのだ。 それは瞬く間にプロシュートの周りの闇を払うと、さらに輝きを強くする。 ――くっ、目が! プロシュートは反射的に顔を庇った。 そうして、あまりの眩しさに目が開けられなくなったとき、目が開いた。 「……か! ディ・モールトッ! ディ・モールトッ! よいぞぉッ!」 目が覚めた瞬間、プロシュートは自分がベッドに寝ていることに気付いた。 白い、清潔そうなシーツだ。あまり使われて無いらしく、生地は少し硬い。が、手触りはよかった。 「…………またメローネがゲームをやってるのか。 普段は冷静で頭脳派なんだが、ジャッポネーゼが絡むと途端に人が変わるからな……。 それがなけりゃあイイ奴なんだが……」 起き抜けに聞こえたメローネの歓声から、ここがチームの家だと判断したプロシュートは 二度寝をしようともう一度毛布を頭から被り――、 「ちょっと待てぇぇぇぇぇッッッッ!!!!! これはどおぉぉいう事だあぁぁぁぁぁッッッ!!!!」 有らん限りの音量を振り絞って叫んだ。 そうして、それを耳にした残りの仲間たちが、 「なんだ?! プロシュート! 敵か?!」 「おいおい、プロシュートォ。いきなり叫ぶなよ。煩いだろぉ」 「プロシュート兄貴! なんかあったんですかい?!」 「うっせぇぇなぁプロシュート。オレは眠いんだ。起こすなよ」 と、プロシュートとの関係がよく分かる言葉を発してくれた。 ホルマジオとペッシは非常事態だと思い、勢いよく上体を起こした。 イルーゾォとギアッチョは耳を塞いで眠る気満々の姿勢だ。 そんな二人の反応――ホルマジオとペッシは飛び起きたのでよしとする――にプロシュートはギアッチョよりも盛大にブチギレた。 「これが叫ばずにいられるかぁッ!!! なんでオレは……オレたちはここに居るんだッッ?!! オレたちは……それぞれに別れてブチャラティたちを追っていたはずだ!!!」 その言葉に、ベッドの上に居た六人は、この状況の異常さに気付いた! 「そうだ! オレは……ナランチャの野郎に殺されたはずだ!」 「オレはあの三人と戦って変なウイルスに……。 クソッ、もう少しで鍵を手に入れることが出来ていたのによぉ!」 「お、オレは兄貴の仇を取ろうとしてブチャラティにバラバラにされたはずなのに……。 な、なんでこんなところに?」 「オレは……、ミスタの野郎を殺そうとして、新入りのヤツに殺された……。 クソクソッ! あと一歩だったのによ!」 「オレはブチャラティを列車から落とそうとして逆に落とされた。 最後の力でザ・グレイトフル・デッドを使ったが……。駄目だったと言うわけか」 五人はベッドから飛び降りると、輪になって互いに自分たちが失敗したときのことを語り合った。 そして、全員が語り終わると同時に、部屋に沈黙が落ちる。 自分たちは負けた。それならばリーダーは? 数少ない情報でボスを倒せたのだろうか。それとも、死んでしまったのか。 「…………とにかく、なんでオレたちはこんなところにいるんだ? 全員、別々の場所で死んだっていうのに、こんなところに揃ってるのはおかしいだろ」 まるで通夜か葬式のような雰囲気になった気分を吹っ切るためにプロシュートは強引に話を切り替えた。 最初に気付いたせいか、当初の驚愕は比較的治まっていた。 混乱して喚いていても、任務の失敗を思い出し沈鬱としていても、意味は無い。 今やらないといけないことは、この状況を把握してリーダーのところへ帰ることだ! 五人は戸惑い揺れていた瞳に決意と覚悟を宿すとぐっと表情を引き締める。 そうして、互いの顔を見合わせた――ところで、メローネがいないことにようやく気付いた。 「おい、メローネのヤツはどうした?」 「まさかあいつだけここに来ていないとかいうオチじゃねーよな」 「そ、そんな……。メローネだけ居ないなんてこと……」 「チェッ、あいつだけ仲間はずれってことか?」 「いや、オレはあいつの声で目が覚めたんだ……」 仲間が一人居ない。そのことに妙な不安を感じて四人は顔を見合わせる。 が、一人プロシュートだけは確信をもって周りを見渡し……、 「おお! すごいぞ! こんなことも出来るのか!」 「ほっほっほっほっ。 これは基本の基本である『錬金』で、位が高いメイジならさらにすごい事も出来る。 わしはトライアングルメイジの中級クラスぐらいの実力だからそうはできんがな。 それに、『錬金』を得意とするのは土のメイジだから水のメイジであるわしはあんまり使用せん」 「なるほど、なるほど。相性というものだな? ふむう……しかし魔法というのは貴族の血を引かないと使えないのだろう? それなのに全てのこういった作業を魔法だけで行っているのか?」 「うむ。メイジは数が少ないからね、非効率ではある。 それに、こういった仕事は給料が低い事もあって専門的に行うメイジはほとんど居らん。 自分が必要だと感じたときに自分が必要な分だけ作るというのがメイジの基本になっとる」 和気藹々と語り合うメローネと、黒いローブを纏った変な老人を見つけた。 こちらがすごい覚悟をした後で、少々盛り上がっていたところなので、そのギャップはかなりすごかった。 どれくらいすごいかというと、 シリアスなシーンでスマイル全開でタップダンスを踊るリゾットを目撃してしまった! ぐらいの衝撃である。 「……………………………………………… ………………………………………………」 「……………………………………………… ………………………………………………」 「……………………………………………… ………………………………………………」 「……………………………………………… ………………………………………………」 「……………………………………………… ………………………………………………」 さっきとはまた違った意味で不穏な空気が五人を包む。 ペッシは、どこからともなくゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴという音や、 ド ド ド ド ド ド ド ドという音が聞こえてきた気がした。 なんだか周りに居る仲間や兄貴の顔が大変な事になっていっている。 反対に自分はどんどん脂汗を流しているような気がしてきた。 (プロシュート兄貴ィィ~~~~~ッ。目がイってるぜ~~~~~ェェッッ) ペッシは後退る。ブチャラティとの戦いでマンモーニから脱却したとはいえ、 まだまだ経験の浅いひよっこでしかない彼には、この本物たちの放つ気配は重い。 「なるほど! なるほど! ディ・モールト! ティ・モールト! よく分かったぞぉ! だからこそ貴族は平民を支配できているのだな! そういった科学技術を独占する事で!」 「そうとも言えるな。平民には鉄を精製したり火の秘薬を作ったりすることはできん。 ところでカガクとはなんなのだ?」 「あっ! あっ! それは秘密だな。 オレたちにとって重大な秘蘊(ひうん)だからだ。タダで教えるわけにはいかないものだ」 そんな彼らとは正反対に、メローネは至極楽しそうに会話を続けている。 ああ、こんなに楽しそうなメローネはベイビィ・フェイスの息子を操作しているときか、ジャッポネーゼ絡みのときだけだ。 そう、老人と語り合う彼は、とても、とても、とても――――幸せそうであった。 ブッチィィィィ―――――z______ンッ!!!!! その瞬間、何かが切れる音をペッシははっきりと耳にした――と思った。 「めぇぇぇぇぇぇろぉぉぉぉぉぉねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 ペッシを除く全員が、声を揃えて怒鳴る。 あまりの大音量に毛布が浮かび上がった。枕も宙に浮く。ベッドも床から足を離した。 地球のギネスブックには、『閉店だ!』と叫んだ酒屋の亭主が窓ガラスを割った記事があるが、 そのレベルの大声である。ローブを着た老人は漫画のように飛び上がった。 しかし、メローネはふんふんと鼻歌を歌いだしそうなくらいの上機嫌な空気を撒き散らしつつ、 「オマエたち起きるのが遅いな。寝てばっかりいると脳が溶けるぞ」 と、のたまった。 ――ちなみにそれに対するプロシュートたちの返答は――スタンドでの容赦ないオラオララッシュであった(人、これを自業自得と言う!)。
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その能力、『ヘブンズ・ドアー』によって本に変えたタバサを、露伴は真剣な眼差しで見つめていた。 ガリア。王族。エルフ。母親。人形。雪風。北花壇騎士団。ガーゴイル。使い魔。幽霊。はしばみ草。キュルケ。読書。 風韻竜。シルフィード。王都リュティス。プチ・トロワ。トライアングル。イルククゥ。イザベラ。風の妖精。ジョゼフ。 そよ風。グラン・トロワ。親友。エルフの毒。ヴェルサルテイル宮殿。シャルロット・エレーヌ・オルレアン。 父を暗殺され、母は自分をかばってエルフの毒を飲んで心を蝕まれている。 王家としての名を剥奪され、ガリア王国の汚れ仕事を一手に担う、存在しない『北』の名を持つ騎士団。 そんなタバサの記憶を、露伴はどんな気持ちで読んでいるのだろうか。 タバサの過去を、記憶を。一体どんな気持ちで。 「………『今起こったことは全て忘れる』………と」 「………っ」 「あぁ、起きたかい」 机に突っ伏していたタバサが顔を上げて、最初に目にしたのは真正面のイスに座っている露伴の姿だった。 右手で頬杖を付いて、左手でページをめくって読んでいるそれは、絵本だ。 「ぼくが住んでたところと文字が違うんでね、ほとんど読めない。かろうじて絵柄でストーリーがわかる絵本を読んでいるというわけさ」 訊いていないのに説明する露伴の顔を凝視しながら、タバサは必死で頭の中をバイツァ・ダスト。 何があった、何が起こった? さっきまで何をしていた? 何をされた? なにかを。いったい何を? 凝視するタバサの視線に、露伴は気付いていながらも本へ降ろす視線を決して動かすことはない。 タバサを視無い、文字通りの無視。この上なく理想的な無視だった。 どこから、ヴァリエールの錬金。爆発するのがわかってて外に出て……その後は……。 「おいおい。どうしたって言うんだ? まさか『忘れてしまった』と言うのかい? ぼくが、この『岸辺 露伴』がお願いしたんじゃないか。 ぼくが『何処へ行くのか訊いたら君は「図書室へ」といって、「迷惑でなければ連れていって欲しい」と言ったら君は了承した』んじゃないか」 ……そうだった。キシベロハン。そんな名前だった。 「それが図書館に着いたら急に『倒れてしまった』んじゃないか。思い出したかい?」 ………そう、そうだった。忘れていた。それに倒れるなんて、初めての経験だ。朝ご飯をもっと食べておけば良かったかもしれない。 「……お礼」 「ん? あぁ、気にする事じゃあないさ。むしろお礼を言いたいのはぼくの方さ。あんなにも素晴らしい物を見ることが出来たのだからね」 この間も露伴はタバサに視線を向けることはなかった。 そしてタバサもそれ以上何か言うことはなく、本を探しに立ち上がった。 立ち去る気配にも露伴は視線を動かさない。 じっと、机に広げられている、デフォルメされたキャラクターを凝視しながら、膝の上に乗せた静の頬をくすぐる。 それを、静はその小さな手で握りかえし、嬉しそうに笑った。 この、ヴァリエールの使い魔は本が好きなのだろうか。 そう思いながら、読みかけだった本を取って、タバサは露伴の正面の席に着く。 このトリステイン王立魔法学院の図書室には、国内はもちろん、国外で発行された本も集められている。 その蔵書量は圧巻である、彼が言った『素晴らしいモノ』とはその事だろう。 タバサ自身も、ガリア王家の出身故、それなりの暮らしをしていたとはいえ驚いたくらいだ。 本を愛するものであれば、何らかの感嘆を覚えるのは必然だろう。 だとすれば「読めない」というのは、悲しくはないのだろうか。 本を持ってきたは良い物の開かずに、タバサは露伴の顔をじい、と見つめる。 変わった服。あきらかに平民にしか見えないのに、本に注がれる視線には何か不思議な感慨を覚える。 「………こう言うときは。自分自身を読めないのが不便だな。世の中良いことばかりじゃないか」 「……何」 タバサの言葉に、露伴がようやく顔を上げた。 「ん? あぁ、いや。ただの独り言さ」 露伴はそれだけ言って再び本に視線を降ろす。 それから、露伴はその視線を上げることはなかった。 そしてタバサもあえて話しかけると言うことはなかった。 この時は、まだ。 「ふぇ……あぁ……」 一瞬、赤ん坊が声を上げたかと思ったら、露伴の方がガタンと椅子を蹴飛ばすように立ち上がった。 それをタバサは短く注意する。 「図書室」 静謐な図書室だ、それくらいの音でも他のモノの集中力をガオンッするには十分である。 「あ、あぁすまない、ちょっと急用が。おっと、この本は何処にあったかな」 左腕に静を抱いたまま、露伴は読んでいた本を返そうとするが、何処から取ったのか思い出せない。 「返しておく」 「あ? あぁ、そうかありがとう。ではお願いするよ」 タバサからの思いがけない申し出に、露伴はコレ幸いとその本を預ける。 実際は、その本をタバサの隣に置いただけだったが。 「それじゃまた。失礼するよ。ミス・タバサ」 それだけ言って、露伴は図書室を後にする。 露伴の言葉にはタバサは返事することなく、本に目を落としている。 露伴が急に慌てて出ていった理由は、タバサはきちんと理解していた。 ただ、その事のみに気を取られていて、もっと重要なことには全く気が回っていなかった。 出物腫れ物所嫌わず。 食べる物食べれば出すのは当然のことである。 そう、タオルケットに包まれた静がその中に………。 不快感に泣き出した静だったが、場所が場所だけに緊急手段を取った。 コレが教室だとかルイズの部屋だとかならともかく、図書室で大泣きされては困るからだ。 普段は露伴は静にはそんなことは書き込まない。 赤ん坊が泣くのは赤ん坊からのヘルプのサインであり、言葉を使えない故の唯一の意思伝達方法なのだから。 むしろ『泣かれないと困る』のだ。 泣かれて苦労するのは周囲の人間であり、最も近いのは露伴だが、露伴は子守りという経験を大切にしている。 泣かれることは苦ではない。ヘルプサインをしっかりと出してくれる分にはそれは十分納得のいく理由。 露伴が書き込むことは、極力その本人の性格や人生に影響が出ない程度。 そう、ルイズやタバサ書き込んだ『岸辺 露伴に協力する』と言った程度である。 それくらいならば、その本人の人格に影響しない。 ルイズならばぶつくさ文句を言いながらもちゃんと帰る手段を探すだろう。 タバサも、何度か会ううちに自分から協力を申し出てくるだろう。 タバサの性格は露伴も読んで既に把握しているのだ。 無口で無表情で、人と関わりと持とうとしないのは、自分のせいで心を病んでしまった母が理由。 しかし、人との関わりを断つという割には、あのキュルケを親友と感じているところもある。 結局は彼女も人恋しいのだ。 「だからこそ素晴らしい………。見てみたくなったぞ。魔法の使えない『ゼロのルイズ』。 他者を拒もうとする『雪風のタバサ』。そしてそれさえ溶かす『微熱のキュルケ』」 それが、彼女らのリアル。そして露伴が望むリアリティ。 「………まずは静の処理からだな。とりあえず汚物を処分して体を洗ってやって後着替えか……シエスタに頼むか。広場にいるかな」 彼女達というキャラクターが一体どんなストーリーを作り出しているのか、それを想像するだけで露伴は心が躍るのだ。 心の高ぶりに、露伴の脚は軽やかに螺旋階段を下りていった。 「ぐすっ………何よ、みんなゼロゼロってバカにして。ロハンも私おいてどっかいっちゃうし。何でよ、どうしてよ。ロハンまで私を見捨てるっているの………」 ほとんど半泣きで、一人で、ルイズは未だに部屋の片付けをしていた。 しばらく待っても露伴は帰ってこない、等のロハンはルイズのことをてっきり忘れてしまっていることなど露にも知らず。 幼い頃からそうだった。ヴァリエール公爵家の三女として生まれたにもかかわらず、魔法が一切使えない。 その事を、両親にも落胆され、上の姉にはバカにされ……そして使用人にすら哀れまれる始末。 下の姉だけは、いつかきっと出来るようになると慰めてくれたけれど。 ただ、使い魔が召喚できてとても嬉しかった、それが平民で前例がないとは言っても、始めて、始めて魔法が成功したのだから。 それなのに………それなのに……。 「ちょっとルイズッ」 唐突に教室のドアが勢い良く開かれる。 慌ててルイズは目の端に浮かんだ涙を拭う、こんなところを他の誰かに見られたくない。 「……何よキュルケ。片付け中よ」 慌ててやってきたのは憎きツェルプストーの女。 「あんた使い魔はどうしたのよ」 「知らないわよっ!」 ルイズの叫びにキュルケがひるむ。 「知らないわよあんな奴! 人の話聞かないし。人をご主人様だと思わないし。赤ん坊ばっか気にしてるし。勝手にどっかいっちゃうし。ご主人様ほっぽって……うっ……ぐっ……」 「あんた………泣いてるの」 「泣いてなんかないわよ! なくもんですか! 掃除の邪魔だからどっか行ってよバカァッ」 意固地になっているルイズを、茶化せるほどキュルケはバカではない。 ただ、頭の中でグルグルと何かが渦巻いて前後不覚になっている、それを一発で目を冷ます、気の利いたコークスクリューを放った。 「掃除している場合? あんたの使い魔がいまギーシュと決闘しようって言うのに、あんたはこんなところでのうのうと掃除してるってわけ?」 「今なんて?」 「あんたの使い魔が、ギーシュと決闘するって言ってんの。ヴェストリの広場よ、止めるなら今のうちじゃない?」 ヴェストリの、とまでキュルケが言ったところでルイズはその手に持っていた机の瓦礫を放り捨てて教室を飛び出した。
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み「ほら!カナ!!私よ私!草苗みつよ!覚えてない?」 金「草苗みつ…草苗みつ……あっ、思い出したかしらー!専門学校で知り合った… みっちゃんかしらー!?」 み「そう!その通り!!ヴェリィークッド!!!Exactly!!!久しぶりねー!! 元気してたぁ?」 翠「…めぇら…」 金「みっちゃんこそどうかしr翠「てめぇぇぇら!!ちょっっと待ちやがれですぅぅぅぅ!!!」 そこで一喝したのは翠星石だった。場の空気は凍りついた 翠「揃いも揃って、感動の再会するのは一向に構わねーーーーんですがぁぁ!! 翠星石たちにも解るように木目細かに説明・紹介しやがれですぅぅぅ!!!!!!!」 … … … 真「ま、そうね、最初に誰も紹介すらしてなかったのは少々まずかったのだわ」 雛「じゃ、雛から紹介させてもらうのー♪この子はトゥモエー、『柏葉 巴』って言う名前なのよー 雛が高校の時のお友達の一人なのー♪」 巴は軽く会釈をする 巴「初めましてRozen Maidenの皆さん、柏葉 巴と言います。本日はお目に掛かれて光栄です!」 翠「ま、おめぇは超幸せ者ですぅ!翠星石たちにライブ以外で面拝めるんだから有り難く思いやがれですぅ!」 蒼「こちらこそ宜しく、ところで柏葉さんは雛苺と学生時代何かしてたのかい?」 銀「それは気になるところねぇ」 水銀燈はテキーラヤクルト割りを口にする。 巴「えーっと、そうですね、はい、私と雛苺は軽音楽部で知り合ったんです!」 雛「雛がボーカル担当してたのよー♪」 巴「雛苺とってもいい声してましたよ!とてもヴァリエーションが広くて…」 …なるほど…道理でデス声も出るはずだ…と薔薇乙女たちは確信した 巴「文化祭じゃ、お客さん沢山来てくれて、校内じゃ鋼鉄の乙女・歌姫とまで謳われたんです! 特にメタルとかハードロック系の時はもう大盛況でした!」 雛「やっぱ、歌って素晴しくて、とっても気持ちいいのよー♪」 それって重音楽部の間違いじゃね?2人以外はそう疑問に思った… 銀「ところでぇ…貴女は何担当してたのぉ?」 巴「えっ…私ですか、私はギター担当してましたよ」 銀「あらぁ…私もギターよぉ偶然ね、今度機会があれば見せてもらいたいわぁ貴女のギター」 巴「プロに通用する程の腕じゃないですよw」 銀「それでも構わないわぁ…大切なのはハートよぉ…♥」 雛「すいぎんとー、トゥモエのギターはとおっても上手なのよーー!学校で第2のマーティーって言われてたくらいなんだからー!!」 銀「それは期待だわぁ…」 水銀燈は軽く微笑んだ。 こんな感じで取り敢えず巴の紹介は無事済んだ。 翠「なるほど、よく解ったですぅ!じゃ次は真紅の隣にいるそこの眼鏡野郎ですぅ!」 J「(『桜田』って名札が目に見えないのかこのアマ…#)僕ですか?名前は『桜田 ジュン』。一応真紅の 真「下僕第1号よ」 J「誰 が 下 僕 だ !なった覚えもないぞ。幼馴染ってとこかな」 翠「真紅、この眼鏡野郎とは本当に主従関係ですかぁ?」 真「強ち、嘘でもないわね」 J「真紅!誤解招くような物言いするn」 翠「そういや、さっきおめー、端から見てれば真紅にボッコにされてた気がするですぅ! それに加えて下僕とくりゃあもしかしてMですかぁ?ww」 J「なっ、な訳ないだろ!!しかも下僕じゃないって!!(ハァァァァ…最悪だorzこんな誤解招くなんて)」 … … … … 真「自分から素直に白状出来ないなんてどうやらあの時の調教が足りなかったかしらw?」 J「う、うわああああああqwせdrftgyふじこlp;@: 巴「さ、桜田君落ち着いて!」 真「(ちょっと、からかいが過ぎたのだわ…w) この誤解については後にちゃんと解けたそうな…ww 金「じゃ次はみっちゃんを紹介するかしらー」 み「はい!どーーーもーー!カナの親友の『草苗 みつ』ことみっちゃんでーーーすっ!! 専門学校卒業した後はここの店長やってまーーすっ!」 真銀翠蒼雛薔「…( ゚д゚)」 あまりのハイテンションっぷりに薔薇乙女たちは少し引き気味である。 ジュンと巴に至っては普段、そんな彼女を見慣れすぎている所為か何ら平気である。 金「カナとみっちゃんは音楽系の専門学校で知り合ったかしらー♪」 み「まだ私が学校に入って間も無い頃ー、こう見えても私結構内気なほうだったのよーw! だから、あまり人とも話さないし、常に一人だったからちょっとネガ入ってたの… で、そこでっ!! たまたま偶然カナと同じクラスになってたの!もうその娘ったら可愛くて可愛くて…これはもうお近づきにならなくちゃ! 是非ともフィアンs…いやお友達にならなくちゃって思ったの!! そして声を掛けてみたら、カナったら潔くこちらこそ仲良くしてほしいかしらー♥って天使係った笑顔で言ってくれたから、私、嬉しくって嬉しくって…カナ思いっきり抱きしめちゃったの!!」 金「あの時は嬉しかったけどちょっとキツかったかしらー…意識飛び掛けてマサチューセッチュな状態になったかしらー…」 み「まあ、そんだけカナのこと愛してったってことなのよ」 金「手加減くらいはしてほしかったかしらー!!!」 み「ハァ━━━━(´Д`*)━━━━ン♥ちょっと怒り気味のカナも萌えーーーーーーーー!!!!♥♥♥ きゃーーーーーーーーッッッッッッ♥♥!!!!!!」 金「ギャアアアアアアアァァム、みっち゛ゃーーーん…ガナの意識ががまざち゛ゅーぜっち゛ゅ…」 2人の異常なまでの次元に誰も足を踏み入れることは出来なかった…南無三… To Be Continue おまけ 薔「今回…私…一言も喋ってない…(´;ω;`)」 銀「はいはい、ばらしー泣かないのぉ…カルアミルクでも飲んで、元気出しなさぁ~い♥」 薔「(コクン)…銀ちゃん…」 銀「今度はなによぉ…ばらしー」 薔「これ…とっても喉渇くよーー(´;ω;`)」 銀「まぁ、お酒なんだから当然でしょぉww」 (6)へ戻る/長編SS保管庫へ/(8)へ進む
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真「スレカラを御覧の皆さん…」 全「今晩わぁーーーーーーー(なのだわ(ぁ(ですぅ(っ(なのよー(かしらー(…わんばんこ」 銀「ちょっとぉwばらしぃー、今時そのネタはないわぁwwww」 翠「ったくおめぇーは笑福○鶴○ですかぁww」 薔「ショウヘイヘーーーーイ!!」 蒼「ちょwwwwばwwwwばらwwばらしーーwwもう辞めてwwwwこのままじゃwwwwwwうぇっwwっうぇw」 デデーーーーン♪ 蒼「嫌ああああぁぁぁぁ!!!(´;ω;`)まさかこの効果音はwwww」 薔「別に何も無いよ…ビックリした?」 今の効果音は薔薇水晶の手元にあるキーボードからの音だった… 蒼「もぅ辞めてよwwwばらしーwww寿命が3年は縮まったじゃないかーーーーー!!!」 真「ッホン…本日より『スレタイでカラオケ12th~177th Take 薔薇乙女編』は『スレタイでカラオケ12th~177th Take 薔薇乙女編SeasonⅡ』へとバージョンアップするのだわ!」 蒼「思ったよりも早く再開しちゃったね…」 雛「なーんか作者さんがお外で考え事してたら次から次へとポンポンネタが浮かんだって聞いたのよー」 金「作者さんはきっと家に篭っているより外で新鮮な空気を吸いながら考えた方が良さそうかしらー」 蒼「ところで真紅。Season2では一体どんな見所があるんだい?」 真「そうね。ちょっとネタバレ気味だけど少しだけ紹介しましょう。 何とSeason2では、ばらしーに隠された77の人格(28話参照)の詳細が明らかになるのだわっっ!!」 全「な、なんだってぇーーーーーーーっっ!!!??」 銀「ってばらしーww貴女のことでしょぉ…一緒に驚いてどぉすんのよwww」 薔「みんなと…一緒に混ざりたかった…それだけ…」 蒼「何か調子狂うけど…そろそろ幕開けの時間だ!あぁもう出演時間に間に合わないww」 真「えぇ、それじゃ読者の皆様方!!」 全「Het bekijken van dat!!【御覧あれ!!】」 … … … 薔「皆知ってる?真夏のお鍋って意外に美味しいんだよ…」 翠「こら!!ばらしー、舞台がもう始まるですぅ!!早くこっち来やがれですぅ!!!#」 ギュウウウウゥゥゥ 薔「ヤメテヤメテ痛い痛い痛い…うわぁーーーん!!銀ちゃぁーん、翠星石が耳引っ張ったぁーーー!!!。・゚・(ノД`)・゚・。」 長編SS保管庫へ/第1話へ続く
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登場人物-魔女、使い魔 目次(その人物が初出のものを所属作品とする) ※名前をクリックすると各人物個別の目次に飛びます 本編 アニメーション 魔法少女まどか☆マギカ Gertrud(薔薇園の魔女)Anthony(PSP 薔薇園の魔女の手下(造園係)) Adelbert(PSP 薔薇園の魔女の手下(警戒係、見回り係)) Suleika(暗闇の魔女)(※使い魔のみ本編に登場)Ulla Charlotte(お菓子の魔女)Pyotr(PSP お菓子の魔女の手下(捜索係、帽子の捜索係)) お菓子の魔女の手下(看護係)(※PSP版に登場) H.N.Elly(Kirsten)(ハコの魔女)Daniyyel+Jennifer(PSP:ハコの魔女の手下) ハコの魔女の手下(電波の使い)(※PSP版に登場) Albertine(落書きの魔女)(※使い魔のみ本編に登場、本人の初出はPSP版)Anja(PSP 落書きの魔女の手下(ビューン、プップー、プカプカ)) Gisela(銀の魔女)Dora(PSP 銀の魔女の手下) Elsa Maria(影の魔女)Sebastian s(PSP 影の魔女の手下、影の魔女の手下(サハスラブジャ)?) Uhrmann(犬の魔女)(※使い魔のみ本編に登場)Bartels Oktavia von Seckendorff(人魚の魔女)Holger(PSP 人魚の魔女の手下(楽団員)) Klarissa(PSP 人魚の魔女の手下(バックダンサーズ)) 人魚の魔女の魔法(車輪の雫)(※アニメが初出だが、使い魔(?)として扱われたのはPSPが初) Izabel(芸術家の魔女)Michaela(PSP 芸術家の魔女の手下(代表作、意欲作)?) Patricia(委員長の魔女)Mathieu(PSP 委員長の魔女の手下(クラスメイト)) 委員長の魔女の手下(ティーチャー)(※PSP版に登場) Roberta(鳥かごの魔女)Gotz Kriemhild Gretchen(救済の魔女) ?????(ワルプルギスの夜)(舞台装置の魔女)舞台装置の少女 劇団・シモテ(※アニメが初出だが、名前がついたのはPSPが初) 舞台装置の少女 劇団・ソデ(※アニメが初出だが、名前がついたのはPSPが初) 舞台装置の少女 劇団・カミテ(※アニメが初出だが、名前がついたのはPSPが初) 舞台装置の魔女の手下(アカハナ)(※アニメが初出だが、名前がついたのはPSPが初) 舞台装置の少女の手下(アオハナ)(※アニメが初出だが、名前がついたのはPSPが初) ゾウの姿をした手下(※公式名称不明のため、便宜上の呼称) 魔法少女達の姿をした影(※コミック版に登場)(※公式名称不明のため、便宜上の呼称) オランダの魔女(※第八話でグリーフシードのみ登場) 関連作品(外伝、パロディを含む) ドラマCD フェアウェル・ストーリー 「牛みたいなツノ頭、バカみたいなデカい斧。」(※公式名称不明のため、便宜的に劇中において該当魔女を表現した台詞を引用) 「大きな青い水風船。」或いは「巨大な青い蛸。」(※公式名称不明のため、便宜的に劇中において該当魔女を表現した台詞を引用 コミック 魔法少女おりこ☆マギカ 杏子に倒された魔女(※公式名称不明のため、便宜上の呼称) ROSASHAHN(玩具の魔女) SIZZLE(趣の魔女) VIRGINIA(鎧の魔女) SUTESHI(猫の魔女) MARGOT 魔法少女かずみ☆マギカ 〜The innocent malice〜 PROLOG(コールサインの魔女)PROLOG(コールサインの魔女)の使い魔(※公式名称不明のため、便宜上の呼称) Arzt KochenArzt Kochenの使い魔(※公式名称不明のため、便宜上の呼称) Nie bluhen HerzenNie bluhen Herzenの使い魔(※公式名称不明のため、便宜上の呼称) Weisse Konigin(弾丸の魔女) あいりに倒された魔女(使い魔?)(※公式名称不明のため、便宜上の呼称) Hungrige Pumpe(古代の海の魔女) 通りすがりの魔法少女に倒された魔女(使い魔?)(※公式名称不明のため、便宜上の呼称) 魔女もどき ゲーム 魔法少女まどか☆マギカ ポータブル Candeloro(おめかしの魔女)おめかしの魔女の手下(ももいろさん) おめかしの魔女の手下(あかいろさん) Ophelia(武旦の魔女)武旦の魔女の手下・先導 武旦の魔女の手下 Homulilly(此岸の魔女) Quitterie(針の魔女)針の魔女の使い魔(33!3) Itzli(忘却の魔女) 魔法少女まどか☆マギカ(モバゲー) 裁縫の魔女 春の魔女 キリンの魔女 鳥になりたい魔女 カエルの魔女 夢の魔女
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クラスメイト達は、『ゼロ』が錬金の魔法を行うと知ると、いっせいに机の下に潜り始めた。 皆、これから何が起きるのか、経験から分かっているのだ。 しかし、近年ルイズの魔力は上がる一方である。 そのたびに規模が拡大してゆくルイズの失敗魔法に、生徒達は自分たちが非難する石造りの机に頼りなさを感じ始めていた。 マリコルヌもその1人であった。 彼はルイズが立ち上がるのとほぼ同時に、真っ先に机の下に避難した人間だった。 我も我もと自分の机に潜り込んで来るクラスメイト達をうっとおしく思いながらも、これから起こるショウタイムに期待と、ほんのちょっぴりの不安を感じていた。 ふと目線をあげてみると、ルイズの呼び出した使い魔の平民が、依然変わらず本を読んでいた。 "こいつ、さては知らないな"と思いながら、マリコルヌはその男を冷やかした。 「おい、平民!そんなところに突っ立ってていいのか?ケガするぞ?」 男はマリコルヌに視線を向けた。 血のように真っ赤な目がマリコルヌを捉えた。 内心の怯えを誤魔化すように、マリコルヌは続けた。 「お生憎様だけど、この机は貴族様専用なんだ。使い魔はおとなしくそこで吹き飛んでな」 男は何も答えなかった。 男はチラとルイズに目をやった。 そこではルイズが真剣な…実に真剣な顔でこれでもかと石に魔力を込めていた。 今から避難しようとしても間に合わないだろう。 男はやれやれとかぶりを振ると、マリコルヌに言った。 「そうだな。そんな所にいたら……ケガをするのは当たり前だな」 ―――机の下から響いた男の声に、マリコルヌはギョッとした。 男は、さっきまで自分が潜り込んでいた場所から 皮肉気な笑みをこちらに向けていた。 ふと気がつくと、自分はついさっきまで男が立っていた場所に棒立ちしていた。 「え!? ………………… …………オレ?」 わけのわからぬ現象に頭がついていかないマリコルヌを置き去りに、次の瞬間ルイズが思いっきり杖を振った。 想像を絶する大爆発が起こり、教壇の上にあった石が全て粉微塵になった。 そして、生徒の方に扇状に爆散していった。 散弾銃のように。 細かな粒状になったそれらは、ビシビシと音を立てながら、生徒の机にめり込んでいった。 当たったらただでは済むまい。 他の生徒達は机の下に避難していたが、1人棒立ちしてしたマリコルヌは、その散弾をモロに受けた。 全身に細かな石粒をめり込ませて、マリコルヌはドザッと倒れた。 「た…………立っていたのは……オレだったァ… 今その机の下にいたのにィ~~~」 思い出したように、全身から血が吹き出してきた。 割と重傷だった。 そんなマリコルヌを無視して、DIOは己の手を見つめながら不思議そうにそれを握りしめた。 試す必要があるな、とDIOがそう言った。 一方ルイズは、呪文を唱えた瞬間に飛び込んだ教壇の下から、ヒョッコリ顔を出した。 側を見ればシュヴルーズが転がっていた。 気絶はしているものの、傷は軽そうだった。 ルイズはチッと舌打ちした。 どうしてこういう奴に限って、変に運がいいんだろうか……ルイズは世の無常を儚んだ。 感傷もそこそこに、ルイズはすくっと立ち上がると、プリーツスカートについた埃を払い、シュヴルーズの方に近づいていった。 さっき『ゼロ』と呼ばれたことに対する憂さは晴らしたが、 シュヴルーズに対する怒りはまだだった。 こいつは、自分が失敗することを見越して、私を指名したのだと、ホントかどうかは定かではないが、『ゼロ』ネタでからかわれて、頭に血が上っているルイズはとにかくそう決めつけていた。 そして、その状況ではそれが全てだった。 ルイズは無表情でシュヴルーズを1回蹴りつけた。 ゴロンとシュヴルーズが転がった。 ゴム鞠みたいに転がるシュヴルーズを見て、ルイズはニヤっと笑った。 ゲシゲシと無言でシュヴルーズを蹴り回した。 (アンタが悪いのよ!(ドゴッ) 私を怒らせたアンタがッ!(ドガッ) 思い知れ!(ガッ) どうだ!(ガッ) 思い知れ!(ドガッ) どうだ!(ゲシ) どうだぁ!(ボグッ)) 夢中になって蹴り回すルイズだったが、机の下から這い出てくる生徒が1人1人増えていくのを視界の端に捉え、 ルイズはピタリと蹴るのを止めた。 ルイズは切り替えのうまい女だった。 生徒が全員這い出てきたのを確認したルイズは、ケガ人が出なかったことを知ると、再びチッと舌打ちした……心の中で。 ルイズは切り替えのうまい女だった。 だが、机が陰になっていたので、地面でピクピク痙攣しているマリコルヌには、さすがのルイズも気づかなかった。 そして、何事もなかったかのように言った。 「ちょっと失敗したみたいね」 誰も、何も答えなかった。 無言の沈黙を受け流し、ルイズはとても爽やかな表情で自分の席に着席した。 隣の生徒がビクと震えた。 その有様を見て、DIOはどうしてルイズが『ゼロ』と呼ばれているのかを朧気ながらに理解した。 マリコルヌの痙攣が、段々弱くなっていった。 ルイズ……無傷。 DIO……無傷。 キュルケ……無傷。 タバサ……無傷。 マリコルヌ……重傷、早退。 シュヴルーズ……五時間気絶。(爆発で二時間。ルイズの蹴りで三時間。) to be continued…… 20へ
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おれは…死ぬのか…吸血鬼にもなれず…無様な姿をジョジョに晒して…死ぬのか… ……いやだ、そんなのは嫌だーーーッ!!!! おれは使い魔になるぞジョジョーッ!第一話 ふと我に返るとおれは地面に仰向けに寝ころんでいた。抜けるような青空が眼前に広がっている。 周りからは太陽の光を浴びた青草の匂いがかすかに漂ってくる。 おれは死後の世界など信じていない。だが、もし本当に死後の世界があったのだとしたら… まさかおれは天国に来たのか? 反省も後悔もする気はないが自分の行っていた事が良い行いだとは到底思えない。 だとしたら神という奴はとんでもない―馬鹿野郎だと言うことだッ! と、いきなり視界に少女の顔が写る。おれを覗き込んでいるらしい。 「あんた…誰?」 変な髪の色だ―それがディオの第一印象であった。幼さを残しながらも顔立ちは整っている。 だが髪の色が桃色がかっているのはどういう事だッ!天使というのはまさかピンク色の髪をしているのか? それにあのスカート!ボヘミアン(*19世紀の自由人)の踊り子でもあんな短い丈ではないぞッ! 顔を上げてあたりを見回すと、似たような格好をした人間が沢山いることに気がついた。 遠くには中世を思わせる城もある。どうやらここは天国でもあの世でもないようだ。 「あんた誰って聞いてんのよ!」 先ほどおれを覗き込んでいた少女(ガキ)がまた尋ねてきた。まずは状況を把握する必要がある。 「ここは…どこだい?」 「質問を質問で返すなーっ!!疑問文には疑問文で答えろと、教えられてるのか!?」 どうやら怒らせたらしい。フン、自分から聞いてきて勝手に怒り出す。これだからガキは。 手で草を払いながらできるだけ丁寧に対応する。 「失礼した、ぼくはディオ・ジョースター…」 ここで考える。おれはジョースター卿を殺そうとした。また、あのジョナサンと同じ姓でいる事にももはや耐えられなかった。 そろそろジョースターの名を棄ててもいい頃合いだろう。 「すまない、言い間違えた。ディオ・ブランドーだ。」 「どこの平民?」 胡散臭い目で見つめてくる。それよりも平民だとッ!?このディオの格好はどう見ても貴族の格好だ。 少なくともよほど裕福な庶民でない限り間違える事はないだろう。 だが、こいつは今おれの事を平民だと断定した。よく聞くと周りからも 「ゼロのルイズが平民を召還した…」 「やっぱりルイズはルイズだ…」 という声が聞こえてくる。ところどころから笑い声も聞こえる。どうやらあのガキはルイズというらしい。 だが奴らの目――まさかこのディオを笑っているのか!?年端もいかないガキどもが――ッ! 「フン、どこに目がついているのかは知らないがこれでもぼくは貴族でね」 「はぁ?マントも杖もないのにどこが貴族なのよ?」 杖?マント?何を言っているんだ、こいつは。 よく見ると周りの奴らも全員マントに杖を持っている。 するとおれは死んだのではなく黒魔術かなにかでここに召喚されたというのか…? よく見ると奴らの足下には様々な動物がいる。まさかおれがあいつらと同じだというのかッ! このディオがッ! ルイズはショックを受けていた。今まで魔法は失敗だらけ、この春の召喚に失敗したら ひと思いに退学…させて…NO!NO!NO! りゅ…留年?NO!NO!NO! りょ…両方ですかぁーっ?YES!YES!YES! もしかして家門の恥として絶縁ですかぁーっ!YES!YES!YES!OH!MY!GOD! な結果になるのは目に見えている。だからこそ爆発の後、なにかが倒れているのを見た時は喜びで泣きそうになった。 だが現れたのはドラゴンはおろかネズミでも蛙でもない、一介の平民だった。 そ、そりゃちょっとハンサムだけど今私が欲しいのは使い魔であってイケメンの平民じゃない! だからこそルイズは詰め寄る。 「ミスタ・コルベール!もう一度召喚をやり直させてください!」 だが現実の壁は非情だった。 「ミス・ヴァリエール、それはできない。二年生に進級する際、君達は『使い魔』を召喚する。今やっているとおりだ。 それによって現れた『使い魔』で、今後の属性を固定し、専門課程へ進むんだ。一度呼び出した『使い魔』は 変更する事はできない。何故なら春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ」 「でも…」 「ミス・ヴァリエール。今君の選べる選択肢は二つだ。あの青年と契約するか、それとも留年するかだ。」 「くっ…」 「あら、よく見るといい男じゃない。ねえ、タバサ」 「…。」 この一連の流れを外野は楽しんでいた。 「あの」ゼロのルイズが使い魔召喚に成功したと思ったらよりによって平民を召喚したのだ。 『全く期待していなかったサーカスを見に行ったら意外と面白かった』その場の空気の殆どがそんな感じであった。 特にキュルケは楽しんでいた。ルイズはツェルプストー家にとって今、最低限張り合うに値する人物となったのだから。 タバサは…見ていなかった。本を読む方に既に意識を移していたのである。 視界の片隅で先ほどのガキが禿の男と揉めている。話の内容から察するにどうやら本当におれは奴らに『召喚』されたらしい。 吸血鬼だってこの世に存在するんだ、今では召喚だってあり得る話だ。ディオがそう考えていると 男との口論を終えた少女はディオに歩み寄ってきた。 「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから!」 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。 この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 またも意味のわからない事を畳みかけてくる少女に反論しようとした瞬間、ルイズの唇がディオのそれと重なる。 ズキュウウゥンッ!! どこからともなくそんな音が聞こえてきた。 「やった!さすがゼロのルイズ!俺たちにできないことを平然とやってのける!そこに痺れるあこがれるぅ!」 とは後に当時の事を語るマリコルヌの弁である。 (ど…どうなのかしら…?) ルイズがディオの顔を見ると、ディオは醜悪な顔――はっきりと人間の表情でいえば怒っていた。 「貴様!このディオに対していきなりなんの真似だーッ!」 ディオの拳がルイズに迫る。避けられない!ルイズは思わず目を瞑った。だがいつまでたっても殴られる気配はない。 恐る恐る目を開けるとディオは左手を庇うようにして屈み込んでいた。 「ぐっ……貴様…何をした……ッ!」 そこにははっきりと使い魔のルーンが刻まれていた。 (も…もしかして成功した?) 「ミス・ヴァリエール、進級おめでとう」 ふと気がつくと後ろでコルベールが微笑んでいた。 『ゼロ』のルイズ、魔法が生涯で一度も成功した事がないと揶揄されたルイズであったが使い魔の儀式は成功したのだ。 今まで張り詰めていた気が抜けたルイズはへたへたと座り込んだのであった。 to be continued…
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なかなか戻ってこない二人に、ルイズ達は焦りを感じていた。 本当にここで待っていていいのか? 彼らの後を追わなくていいのだろうか? 口には出さなくとも、彼女達の表情が如実にその心境を表していた。 シルフィードで上空から様子を見るか? とタバサは考えたが、恐らく木々に阻まれて何も見えないだろうと思い直し、その案を却下した。 そんな風に皆が皆ギアッチョ達の方に気をとられていた為――彼女達の背後で聞こえていた、ズズズと何かを引きずるような集まって行くような音を意識する者はいなかった。 最初に気付いたのはタバサである。経験から来る何かがゾクリと警鐘を鳴らしたのを感じて、彼女は後ろを振り向いた。 そこにあったのは、もはや八割方完成しつつあるあの大ゴーレムであった。 そしてタバサより遅れること数瞬、同じく振り返ったキュルケが驚愕の声を上げ、その声でルイズがようやく後ろを振り向いた時には、ゴーレムの形成部位はもはや一割以下を残すのみだった。 「あっははははははははは!!」 ついに完成したゴーレムの肩で高笑いをあげる女性に、三人の眼は釘付けになる。 ミス・ロングビルと名乗っていたその女性は、今や正体を隠そうともせずに彼女達を見下ろしていた。 「ふふふ・・・いいわねぇその表情 伝来の至宝を盗まれた貴族みたいないい顔してるわよ三人とも!」 心底楽しそうに言って、土くれのフーケはまた高笑いをする。 「騙したのね!!」 ルイズがキッとフーケを睨む。しかしフーケはニヤニヤと笑うのをやめない。 「ええ騙したわ」と愉快そうに返答し、なおも続けて挑発する。 「このままあんた達を潰しちゃっても面白くないわねぇ そうだ、先に一発攻撃させてあげるわ ほら、やってみなさいよ ん?」 完全にこちらを侮って挑発を繰り返すフーケに、ギアッチョではないがルイズはもうブチキレ寸前だった。しかしキュルケはそんなルイズを片手で制して、 「それ、嘘じゃありませんよね?ミス・ロングビル・・・いや、土くれのフーケ」 微笑を浮かべながら問う。 「失礼ね 私が約束を破るように見えるかしら?」 どの口がそれを言うかと思ったルイズだったが、キュルケはそ知らぬ顔で話を続けているので唇を噛んで耐えた。 「それじゃあ、お言葉に甘えさえていただきますわ」 ニッと笑ってそう言うと、キュルケはタバサに何事か声をかける。それを受けてタバサが手早く抱えていた箱を開け、キュルケに破壊の杖を手渡した。 「あっ!」 とルイズが驚くのと、 「な・・・!?」 フーケが驚愕するのは同時だった。キュルケはフーケが約束を反故にしないうちに詠唱を始める。 唱える魔法は炎と炎。炎の二乗で生成する、フレイム・ボールだった。 破壊の杖がどんなものかは知らないが、この魔法に破壊力がプラスされればフーケのゴーレムとてただでは済まないはずッ! 一瞬のうちにそう判断したキュルケは、破壊の杖をゴーレムに向け、魔法を発動させる! 「食らいなさい!フレイム・ボールッ!!」 「・・・・・・」 シン、と場が静まり返る。破壊の杖からは、炎の弾どころか火の粉一つ発生しなかった。 「あ・・・あれ?なんで?どうして?」 キュルケは焦って杖を上にしたり下にしたりしている。両脇の二人も、何故魔法が発動しないのか全く理解出来ないようだ。 フーケは怯えていた・・・ような演技からさっきまでの凶相に戻り、 「期待外れだわクソガキ共」 と吐き捨てた。 「なんですって・・・!?」 キュルケ達がゴーレムを見上げる。 「その杖ね、使い方が分からなかったのよ どうやら普通に杖として使うことが出来ないみたいでね で、メイジを呼び寄せて・・・使い方を盗んで殺すつもりだったんだけど やっぱダメねぇ」 「ガキなんかに期待したわたしがバカだったわ」と言って、フーケは今度こそ慈悲のかけらもない眼で3人を見下ろした。そして。 「じゃ、死になさい」 言うや否やゴーレムの鉄腕を振り下ろす! 「股下!」 タバサがとっさに叫んで駆け出す。キュルケとルイズがそれに続き、石人形の初撃は虚しく宙を打った。 柱のようにそびえる両の足の間をくぐると、後方でシルフィードが待機していた。 タバサはあの状況に流されることなく、使い魔に冷静な指示を送っていたらしい。 ルイズは改めて、このタバサという少女の実力を痛感した。 先頭を走っていたタバサが飛び乗り、それとほぼ同時にキュルケが飛び乗る。 「ルイズ」 タバサが最後尾だったルイズを促した。しかし―― ピタッ、と。ルイズは止まった。キッと後ろを振り向き、杖を握る。 「ちょ、ちょっとルイズ!何してるのよ!!」 キュルケが慌てて声をかけた。しかしルイズは振り返ることなく言う。 「あいつを倒すのよ!ゴーレムには歯が立たなくても フーケに直接魔法を命中させれば倒せるわ!」 キュルケは愕然とした。本気だこのバカは。 「何を言ってるのよルイズッ!!あの巨人の攻撃をかいくぐってフーケ本体に魔法を命中させるだなんて、そんな芸当私だって難しいわよ!! ここで逃げても誰もあなたをバカにしたりはしないわ!意地を張る必要はないのよ!ねえ!!早く乗りなさいルイズ!!頼むから早く乗ってッ!!」 キュルケは必死で訴える。ゴーレムはどんどんこちらに迫って来ている。 ルイズはカタカタと震えているが、それでも振り返らない。 「ルイズ!!」 タバサが珍しく語気を荒げる。ゴーレムはついにルイズを射程距離に捉えた。 「行って!」 ルイズが怒鳴る。キュルケも怒鳴る。タバサまで怒鳴った。そんな彼女らの状況など気にも留めず、ゴーレムが無慈悲に拳を振り下ろす! 「行きなさいよ!!」 と最後に大きく叫んで、ルイズは駆け出した。先ほどのタバサと同じ戦法で股の下をくぐる。タバサは一瞬苦虫を噛み潰したような顔を見せると、 「行って!」 シルフィードに指令を下す。間一髪、風竜はゴーレムの一撃を避けて飛び立った。 ルイズはゴーレムから距離を取って走る。射程範囲の外にいるうちに作戦を練ることにした。 ――プライドを、捨てる ルイズの考えた作戦は、それだけだった。長い詠唱で呪文を発動させても爆発するだけ。 何をやろうが爆発するなら、最短のコモン・マジックで魔法を乱発する! この速度の速さだけが、自分がフーケに勝っているものであるとルイズは理解していた。 今大事なのはプライドじゃない。そんなものを失うより、ギアッチョを失うほうがよっぽど辛い。よっぽど怖い。よっぽど、悲しい。 ルイズはごくりと唾を嚥下して、ふるふると首を振った。そうだ、それに比べればゴーレムなんて全然怖くない。バッと顔を上げると、ルイズは杖を握りしめてゴーレムへと駆け出した! 「一番最初に死にたいのはあんたかい!」 フーケの指示で、ゴーレムは三度腕を振り下ろす。ルイズはまたも足をくぐり抜けてそれを回避し、そして振り向きざま魔法を放った! 「ロック!」 ドウン!とゴーレムの背中で空気が爆ぜる。失敗だ。ルイズはすぐに気持ちを切り替え、振り向きつつあるゴーレムの足を前面からくぐり、ゴーレムの背面向けてもう一度ロックを唱えた。 今度はゴーレムの腰で爆発が起きる。失敗。 ――落ち着け・・・冷静に照準を合わせるのよルイズ・・・! うるさいぐらいに音を響かせる心臓を片手で抑えて、ルイズはまた足をくぐりに走る。くぐる。振り向く。放つ。失敗。くぐる。振り向く。放つ。失敗。くぐる。 振り向く。放つ。失敗―― 「ちょろちょろとしつこい鼠だね!いつまでも同じ手が通用すると思うんじゃあないよ!」 しびれを切らしたフーケが、続けて下をくぐろうとしたルイズにヒザを落とす! 「きゃああっ!!」 直撃コースだった。無駄だと知りつつ、ルイズは頭を庇う。 ドッグォオン!! ・・・足が落ちてこない。何故?ルイズがゴーレムを見上げると、その頭からは白煙が上がっていた。 「フレイム・ボールのお味はいかがかしら!?」 ウインドドラゴンから身を乗り出して、キュルケが杖を構えている。 「もうちょっと濃いほうが好みだわねッ!」 フーケが叫ぶと、全然堪えた様子にないゴーレムがシルフィード目掛けて腕を繰り出す!器用に避け続ける風竜の上で、 「出来る・・・ことを するッ!!」 ギアッチョに言われたことを反芻し、2発、3発と火弾を放つ。その言葉にタバサもコクリと頷き、得意技のウィンディ・アイシクルを撃ち放った。 空から降り注ぐ炎と氷の雨はゴーレムの体にこそ穴を穿たないが、 その肩に立っているフーケは生身なのである。ゴーレムは両腕でフーケを庇い、その場に棒立ちになった! 一番危険なポジションであるゴーレムの真正面にいたルイズだが、 ――チャンスは今しかないわッ!! 素早く深呼吸をして、すっとフーケを見上げる。グッと杖を突き出して、全精神を集中させる。冷静に、照準を合わせる。わずか眼をつむり――開く。 「・・・・・・ロック!!」 ドッガァァアアァッ!!! 「命中した・・・!!」 爆炎は、フーケの立っている位置、そのド真ん中で炸裂した。 「・・・やった・・・!わたしでも勝てた・・・ッ!!」 ルイズは嬉しさで泣き出しそうだった。ゼロのルイズが、土くれのフーケに打ち勝った・・・! しかし――煙が晴れるにつれ、ルイズの感動は徐々に絶望へとその色を変えた。 煙が晴れたそこでは―― 岩で作った盾の影で、フーケが微笑みながらルイズを見下ろしていた。 「・・・そんな・・・」 ルイズが後じさる。 「あんたの速射に対して・・・いつまでも無策でいるわけがないでしょう?」 フーケが汗を垂らしながら笑う。ギアッチョ達に差し向けたゴーレムとこっちのゴーレム、そしてこの岩の盾で、フーケの力はかなり消耗されていた。 「一旦身を潜めるしかないかねぇ・・・顔を見られちまったのは残念だけど」 ふぅ、と溜息を一つついて、 「だが、こいつをあんたに食らわせる余力ぐらいは残ってるよッ!!」 フーケはギン!とルイズを睨んだ。 バゴァッ!! ゴーレムの胸から岩塊が一つ、眼にも留まらぬ速さで飛来し―― ルイズの左足がはじけた。 ギアッチョとギーシュは、木々の隙間にフーケの大ゴーレムの姿を認めた。 「・・・ヤ ヤバいよ、ギアッチョ!!」 フーケの騎士達から逃げ回りながら、ギーシュが叫ぶ。 「・・・くッ、こいつら僕のワルキューレより強い・・・!」 フーケのゴーレムに、ワルキューレは一体また一体と破壊されていた。 「やかましいぜマンモーニ!無駄口叩いても始まらねぇッ!!」 ギアッチョはその逆、一体、次、その次とゴーレムの首を刎ね飛ばしている。 ギーシュのワルキューレは残り五体。それに対して、フーケのゴーレムは同じ五体を数える。 「もう少し逃げ回ってな・・・ とっととカタをつけるッ!!」 袈裟斬りに振り下ろされた剣をかわし、そのままぐるりと回りこむようにしてゴーレムの後ろに回る。 一瞬の動きで腕を引き、ゴーレムの首を斬り飛ばした。 逃げ惑いながらもギアッチョの腕前に感心していたギーシュだったが、 「あ・・・ッ!?」 あることに気付き、心臓が跳ね上がった。 「ギッ・・・、ギアッチョぉおおぉ!!」 「やかましいって言ったろーがマンモーニ!!」 「それどころじゃあないッ!見るんだシルフィードを!!『ルイズがどこにも乗っていない』!!」 「何・・・だとォオォ!?」 ギアッチョはバッと飛び下がると、上空に視線を移した。確かに、ルイズの姿はどこにも見当たらない。 「――あのバカ野郎 まさか地上で・・・」 他の可能性を考える。見えてないだけでは?いや、それはない。 風竜がどんな体勢になってもルイズの姿は見当たらない。一人でこっちに向かっている? これもないだろう。罠が張られているかもしれないところにむざむざルイズを行かせるようなことをする奴らじゃあないはずだ。 妙な意地を張って地上で戦っている?これが一番ありえそうだ。ルイズはプライドが高い。 己の貴族としてのプライドの為なら、命を捨てる覚悟で戦いに挑むこともあるかもしれない。 そして最後の可能性。ルイズは、もう既に―― ギアッチョはギリっと歯を噛んだ。考えている場合ではない。自分がすべき事は一秒でも早くルイズの元へ駆けつけることだ。 ――ホワイト・アルバムを全開にするか? ギアッチョはこの場を一気に打開する方法を考える。 ――いや、それはマズい オレのホワイト・アルバムは刀やスーツを作る精密さはあるが、敵だけを選んで凍らせるといった器用さはない・・・ッ ギアッチョの顔が苦悩に歪む。そんなギアッチョを見て、ギーシュは一瞬・・・ほんの一瞬考え込み、 そして。 「・・・う・・・うぉぉおおおぉッ!!ワルキューレッ!!僕を軸にッ!矢じりのように並べェェェッ!!」 ワルキューレに号令を発した!ギアッチョはイラついた顔でギーシュを見る。 「何やってるんだてめー・・・黙って逃げてろってのがわかんねーのか!!」 しかしギーシュは壮絶な意思を持った瞳でギアッチョを睨み返す! 「行けギアッチョ!!ここは僕が食い止めるッ!!」 「正気で言ってんのかマンモーニッ!!てめーじゃ勝てねえのは分かってるだろうがッ!!」 「いいから行くんだッ!!」 ギーシュは怒鳴る。 「ここだ・・・!ここで、『覚悟』を決めるッ!!僕はここで、『覚悟』を身につけるッ!!」 ギアッチョはギーシュを見た。ギーシュの眼に、迷いや怯えはない。侮りも思い込みも、恐怖も後悔もない。ギーシュは今、ここで覚悟を知ってやると『覚悟』していた。 「・・・『覚悟』とは 犠牲の心じゃあねえッ! それだけは覚えておけッ!!」 自分を殺した男の言った言葉を、ギアッチョは今ギーシュに伝える。 そして言うが早いか、ギアッチョは後ろも見ずに駆け出していった。 ギーシュは彼に満足げに眼を遣ると、すぐにフーケのゴーレムに眼を戻した。 「いくよワルキューレ・・・『覚悟』を決めろッ!!」 ギーシュはそう叫ぶと、心の中でワルキューレに指示を出す。矢じりの隊形のまま、ワルキューレは右端のゴーレムに突っ込んだ! 先頭のワルキューレの斬撃をかわし、ゴーレムがワルキューレを真っ二つに切り裂く。 しかしギーシュはそれを見越していた。先頭のワルキューレがやられる前、既にその右後ろに陣取った二体目が、先頭のワルキューレの首に向かって剣を振るいはじめていた! 唐竹割りにされた自らのワルキューレの首を更に自分のワルキューレで薙ぎ、そのままフーケのゴーレムの首も刎ね飛ばす! 間髪いれず左側から襲ってくる二体目のゴーレムに、ギーシュの左前に構えていたワルキューレが突きを受けて倒れ――その影から、ワルキューレの槍を拾ったギーシュがゴーレムの首を突き飛ばした! 「肉を斬らせて――骨を断つ・・・か」 ギーシュはようやく気付いた。自分が負けていたのは、力の差があったからだけではない。 朝、オスマン達の前で仲間に頼らないと誓ったにも関わらず、ギーシュは知らず知らずのうちにギアッチョにべったり頼っていた。 自分のワルキューレが倒れるところは見たくない。ある程度の安全圏からサポートしていれば、ギアッチョがケリをつけてくれる。 そんな甘っちょろい考えが、ワルキューレの動きを、攻撃を、判断を、ハンパに鈍らせていたからだ。 それが理解出来たならば、例え相手がトライアングルとはいえ、完全遠隔操作のゴーレムなどに負けるわけがないッ! ギーシュは片手に槍を構えて、高らかに宣言する。 「これで僕のワルキューレは三体・・・お前達は二体だッ!! 僕は逃げない・・・お前達を恐れない そして侮りもしない!! 我が名はギーシュ・ド・グラモン!我が友ルイズの為、そして我が道の師、ギアッチョの為ッ!!今この場で、お前達を斬り伏せることを『覚悟』するッ!!」 自分で槍を握ったことなどないにも関わらず――その姿は雄雄しく、そして気高かった。 ギアッチョは走る。走りながら、何故自分はここまで必死になっているのかと考えた。 たった数週間前に知り合ったばかりのガキのために、何故オレは血管がブチ切れそうな勢いで走っているんだろうか。 ギアッチョは考える。オレが生きていた頃なら、こんなことはありえない。 こんなどっちつかずで下手をすれば両方を失ってしまうような判断はしないはずだ。 ――いや。そうじゃない。生きていた時の判断とは、つまり暗殺者としての判断ということだ。 そういうことじゃない。ハルケギニアにいるオレは、トリステインにいるオレは暗殺者じゃあない。使い魔だ。 「使い魔のギアッチョさんよォォ・・・おめーは何故走ってるんだ・・・?」 解らなかった。あらゆる感情の摩滅した世界で生きてきたギアッチョには、自分の心など解るはずもなかった。だが、理由は解らなくても一つだけ 理解していることがある。 あいつを死なせたくない、自分はそう思っている。それだけは解った。だから。それだけをともし火に、ギアッチョは走る。 デルフリンガーもまた焦っていた。こんな嫌な予感は何年ぶりだろう。 守ると誓ったばかりなのに。ルイズを守ると約束したばかりなのに―― 今朝までロクに会話も交わしたことがなかった娘だった。だがそれがどうした?そんなことは関係ないしどうでもいい。 自分はルイズを守りたいと思った。だから誓った。ならば自分はデルフリンガーの名にかけて誓いを果たす。それだけだ。 ・・・なのにどうして自分には足がついていないのか。デルフが今日ほど己を呪った日はなかった。 雑草の生い茂る地面ではホワイト・アルバムでスケートなど出来ない。 鬼のような形相で森を駆け抜け、小屋を中心に広がる空き地が目前に迫ったその時、ギアッチョとデルフリンガーがそこに見たものは、 「――バカな・・・」 左の足首を吹っ飛ばされて地面に倒れるルイズと、それを今まさに踏み潰さんとする巨大な岩の足だった。 何もおかしいことはない。十分予想していた状況だった。しかしギアッチョはそう言わずにはおれなかった。 そしてそれは、デルフリンガーも同じことだった。 「・・・嘘だろ・・・」 ギアッチョは足を止めない。茂みを掻き分け、空地に飛び込み、ルイズに向かって走り続ける。しかしその頭は、悲しいほど冷静に状況を計算をしていた。 ルイズまでの距離、25メートル。到達所要時間、約3.4秒。 ゴーレムの右足がルイズを踏み潰すまでの時間、2秒未満。 絶望だった。 「うおおぉおあああああああああああああ!!!!」 ギアッチョが絶叫する。いくら叫んだところで、いくら怒ったところで、もう辿り着けない。間に合わない。ルイズは――救えない。 何が最強のスタンドだ。絶対零度は全てを止める?じゃあやってみろよッ!!今ここで!!この距離で!!2秒以内にあいつを止めてみろよッ!! 怒りと無力さと絶望に駆られて、ギアッチョはただ叫ぶことしか出来なかった。 ――たとえ天が落ちてこようが・・・ デルフリンガーもまた、絶望していた。今朝誓ったことを、5時間も経たないうちに破ってしまう。 そしてその場を自分はただ眺めているだけ ――これほど滑稽なことがあるだろうか?デルフリンガーはただの剣だ。目の前で何が起ころうと、彼は常にただ見ていることしか、 この身が、砕け散ろうが―― 「――あ、ああ・・・ああぁああぁあああああああ!!!」 稲妻に打たれたように、デルフリンガーは思い出した。こいつは俺の『使い手』だと。そして、それだけで十分だった。 「ダンナッ!!俺を抜けェェェ!!!」 喋る魔剣は絶叫する。 「イカレてんのかてめーは・・・ッ!!少し黙って」 「いいから早く抜けェエェェェーーーーーーーーッ!!!!!」 鬼神の如きデルフリンガーの絶叫にギアッチョは尋常ではない『意思』を見出し――柄に手をかけ、一気に引き抜き。 ドンッ!!! その瞬間、ギアッチョは消えた。いや、正しくは眼にも留まらぬ速さに『加速』した。 ギアッチョを見ていたものがただ出来ることは、一定の間隔で土煙を巻き上げて弾ける地面で彼の向かった方向を把握することだけだった。 ギアッチョとデルフリンガーは一瞬にして距離を詰め、ルイズを突き飛ばし、 ズン!! 彼女の身代わりになった。 今、何が起きた? 誰もが状況を上手く認識出来ず、場は沈黙に包まれた。 ルイズが助かり、ギアッチョが死んだ。最初にそれに気付いたのは、キュルケとタバサだった。 ゴーレムがその手でフーケを庇っている限り、彼女達にゴーレムを止める手段はなく ――ルイズが踏み潰されるその一瞬、キュルケ達に出来たことは彼女の名を叫ぶことだけだった。 しかし巨大な岩塊がルイズに打ち下ろされる寸前、誰かがその下に飛び込みルイズを弾き飛ばした。誰か?誰かって何だ。 ギアッチョ以外に誰がいるんだ。 キュルケは、そしてタバサはまさに茫然自失だった。死んだのはルイズではない。 得体の知れない平民の使い魔だ。ルイズは生きている・・・。喜ぶべきじゃないか。 頭ではそう思っているのに、キュルケは震えが止まらなかった。 隣のタバサはいつもと同じく何も喋りはしないが、その瞳は信じられないものを見たかのように見開かれていた。 次に事態を理解したのは土くれのフーケである。 無詠唱で魔法を使うメイジという一番の危険人物が死んだことに気付き、フーケはヨハネの首を貰い受けたサロメのように笑い狂った。 ちょこまかとうるさい落ちこぼれを殺して逃げるつもりが、死んだのは何をしでかすか解らない異端の平民だったのである。 信じられない幸運にフーケは狂喜した。 何かに突き飛ばされて呆然とへたり込んでいたルイズは、その哄笑で ようやく理解した。自分を突き飛ばしたギアッチョが、身代わりになって死んだ ということを。 「・・・・・・・・・・・・・・・嘘・・・・・・」 ルイズは長い時間をかけて、やっと一言言葉を吐き出した。 「嘘だよね・・・ギアッチョ・・・・・・」 ルイズの声は震えていた。ゴーレムのことなど完全に忘れてギアッチョの 『いた』場所へと歩き出そうとするが、立ち上がろうとした瞬間につんのめり 無様に倒れる。ルイズは自分の左足が吹っ飛ばされたことを思い出し、 だがそれでも一歩ずつ這って行く。ギアッチョがこんなことで死ぬわけない。 きっと生きている。すぐに足を壊して出てくる―― しかし少女の淡い期待は、地面に滲む鮮血によって脆くも打ち砕かれた。 ゴーレムの足に接していた場所から流れているそれは紛れも無く ギアッチョの血液であることを悟り、ルイズはその場に崩れ落ちた。 「返事してよ・・・・・・ねえ」 ルイズは消え入りそうな声で問いかける。 「生きてるんでしょ・・・悪い冗談はやめてよ・・・」 しかしギアッチョのいた場所からは何も返ってはこない。聞こえるのは、 壊れたように鳴り続けるフーケの笑い声だけだった。 「・・・そんな・・・・・・ギアッチョ・・・・・・・・・デルフ・・・」 自分が。自分が殺した。その事実に、ルイズは涙すら出なかった。 そろそろ殺すか、とフーケは思った。 今にも死にそうに打ちのめされているルイズを見て若干の憐憫が沸かないでもなかったが、無理やりバカ笑いをしてそれを打ち消した。 自分の正体を知った者を生かしておくわけにはいかない。 ルイズを殺し、こいつの左足を打ち抜いた岩塊で風竜の翼を貫く。 あとは二人を踏み潰すだけだ。 「悪いわねお嬢ちゃん・・・あの世で仲良くしなさいなッ!!」 グッ!! 「・・・・・・・・・?」 ルイズを蹴り飛ばそうとしたゴーレムの右足が、動かない。 いや、正確には――地面から離れない。 「・・・な・・・によ これ・・・・・・」 おのがゴーレムの足を見下ろして、フーケは戦慄する。ギアッチョを踏み潰した右足が、氷によって完全に地面に固定されていた。 そしてその氷の中から声が響く。彼女にとっては地獄の底から響く声、そして『彼女達』にとっては百年間も待ちわびていたように思える声だった。 「・・・・・・ギリギリだ・・・ ええ・・・?クソ・・・ ギリギリ・・・発動出来たぜ・・・」 その声にフーケの心臓は凍りつく! 「そして・・・発動しちまったからにはよォォォ~~~・・・・・・てめーは絶対に逃がさねェッ!!」 何をする気か知らないが・・・これはマズいッ!!そう思ったフーケだったが、ゴーレムの足は大地と同化しているかのように動かない。 そして―― 「ホワイト・アルバム・・・ジェントリー・ウィープスッ!!!」 ビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキィッ!!! 裏切り者を断罪する、氷結地獄コキュートス。まるでそこから響いてくるような声が、彼の姿無き半身を呼び起こす!岩人形の右足を覆う氷は電光石火の如く脛を、膝を、腰を駆け上り、右足から頭に至るまで、その全てが完全に凍りついた! 「なんなのよ・・・なんなのよこれェェェ!!」 無詠唱、という単語が彼女の脳裏によみがえった。彼女はうわごとのように繰り返す。 「こんなの・・・こんなの私達の魔法じゃない・・・!!」 しかしそんな彼女の怯えなど一顧だにすることなく、ギアッチョは無慈悲に宣言する。 「・・・ブチ・・・・・・割れな・・・・・・!!」 バガシャアアアアアァッ!! 千里に響く轟音と共に、ゴーレムの体が端から崩落を始める! 「ま・・・マズい・・・!!逃げないとッ!!」 フーケは慌ててレビテーションを唱えるが、その体は毫末も上昇することはなかった。 「な・・・なんで・・・・・・ハッ!?」 フーケはようやく気付いた。自分の足が、氷によって完全にゴーレムと固定されていることに。 そして彼女にもはや「火」を使う力は残っておらず―― 彼女は己のゴーレムの破片と共に、惨めに、そして無残に墜落した。 フーケの凍りついた両足は完全に割れて分断されていたが、レビテーションで逃げることも出来ないようにギアッチョはホワイト・アルバムで容赦なく地面と固定させた。もっとも、フーケはその時点で完全に意識を失っていたが。 とにかくそうしておいて、ギアッチョはルイズの元へ駆け寄る。 「ギアッチョ・・・!!」 ルイズはおのが使い魔の姿をはっきりと確認し、そこでようやく――そして どうしようもなく、ぼろぼろと涙をこぼした。ギアッチョはすたすたとルイズに近寄る。 言いたいことは色々あるが、とにかく一発ブン殴ってやるつもりで手を上げた。が。 がばっ!と血まみれの自分に抱きついてただごめんなさいと繰り返す少女をブン殴ることは、流石のギアッチョにも出来なかった。 振り上げた手をゆっくりと下ろすと、彼はとりあえず溜息をついた。
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ヴェストリの広場。魔法学院の西側に位置する広場で、日中も薄暗く、それ故に人もあまり寄り付かない。 そんな場所に一人の少女と二人の少年が誰かを待ち受けるように佇んでいた。 少女は広場の中央で腕を組み、少年たちは離れてその様子を伺っている。 「……遅いわね」 「……遅いな」 「……遅いね」 中央で仁王立ちする少女の独り言に、そこから離れて佇む少年たちが答える。 彼女たちは決闘を行なうべく、そしてそれを見守る為に、決闘相手を待っているのだが その相手が一向に姿を現さない。時間だけが緩やかに過ぎていく。 「……来ないわね」 「……来ないな」 「……来ないね」 10分程経過しても未だに相手は現れない。少女は今朝の決闘相手とのやり取りを思い出し、 また無視されたんじゃないかと少し不安になる。 「ひょっとしてさ……」 小太りの少年がボソリと呟き、残りの二人の視線が集まる。 「場所…知らないんじゃないかな?」 「……アンタが連れて来るんじゃなかったの?」 「…知ってると思ったんだ」 少女の質問に被りを振る少年。気まずい空気が流れる。 「使えないデブね」 少女の放った言葉が思春期の繊細な心に突き刺さり、少年は座り込んで嗚咽を洩らす。 人気のない広場に少年の泣き声だけが木霊する。 「オレ……探してこようか?」 広場を包む空気に耐え切れなくなったもう一人の少年が少女に問いかける。 少年の眼から、この場から逃げ出したいと言う感情が溢れ出ていた。 「ダメ。一人にしないで」 普段の横暴さからは到底考えられない言葉を少女が紡ぎ出す。 その眼にはうっすらと涙さえ浮かんでいた。 もう限界だった。 「ここがヴェストリの広場さ」 広場の入り口から聞こえた声。それは悪しき闇を吹き散らす一陣の風。 「ありがとう。助かったわギーシュ」 メイド服を着た少女が、薔薇の造花を持ち泣きはらした顔の少年に感謝を述べる。 少年はそれに手を振って答えると広場の隅に行き、座り込んで再び泣き始める。 その傍には小熊ほどもある大きなモグラが慰めるように寄り添っていた。 「お…遅かったじゃない!!」 「トリッシュ!来てくれたんだね!!」 トリッシュと呼ばれた少女は決闘相手の少女と彼女の主の少年に交互に目をやる。 「……泣いてた?」 「「泣いてなんかない!!」」 殆ど同時に否定し袖で眼を擦る二人。その仕草で泣いていたことは一目瞭然であった。 「ヤッホー!ルイズ来てあげたわよー!」 「キュルケ!アンタなんで来てんのよ!!」 トリッシュたちの後に続いて二人の女性が広場に現れた。 燃えるような赤い髪と、褐色の肌に包まれた豊かな胸の谷間を惜し気もなく見せつける少女と、 透き通る青空のような髪と、雪のように白い肌を持つ少女。 対照的二人。だが、親密な雰囲気が漂う不思議な少女たちであった。 「ちょっとね、向こうがアレなもんだから」 ルイズと呼ばれた少女がキュルケと呼んだ少女の言葉に首を傾げる。 「危険」 青い髪の少女の言葉で尚更訳が判らなくなった。 「と、ともかく!邪魔はしないでよ!!」 「判ってるわ。ちゃんと、負けるところ、見ててあげる」 決闘相手を無視して言い争いを始める二人を見て、トリッシュは一つ溜息を吐くと ルイズの立つ中央へと歩みを進めた。 「遅れて悪かったわね」 近くで聞こえたトリッシュの声でルイズは漸くその存在に気付くと、いつも通りの笑みを浮かべ 嘲りと侮蔑が込められた眼でトリッシュを凝視する。 「てっきり怯えて逃げ出したのかと思ったわ」 「アンタ相手に逃げ出す必要はね~わよ」 ルイズの挑発を意に介さず、トリッシュは逆にルイズを挑発する。ルイズの瞳が怒りに燃えた。 「き、貴族と平民の違いを、ア、アンタの身体に教え込んであげるわ!」 「そのセリフ、聞き飽きたわよ」 頭に血が昇ったルイズが呪文を唱え杖を振り、トリッシュが立っていた場所が爆風に包まれる。 それが開始の合図となった。 「ハズレよ。ヘタクソ!」 トリッシュは魔法が発動する前に横に飛び、爆発を回避してそのままルイズを中心に円を描くように走る。 怒り心頭となったルイズが呪文を唱え、トリッシュの後を追うように爆発が続く。 「逃げてないで戦いなさいよ!この臆病者!!」 ルイズが叫び、広場に敷かれた石畳や広場を囲う壁がルイズの起こした爆発によって穴が開く。 最初は攻撃魔法の呪文を詠唱していたが、どんな呪文でも爆発が起きるので詠唱時間の長い 四系統魔法の呪文を止め、コモン魔法の呪文にルイズは切り替えていた。 コモン魔法の呪文は四系統魔法のルーンを用いた呪文とは違い、唱えるメイジによって違う。 幾つかの、呪文の効果を発揮する為の言葉を入れさえすれば、使用者は各々自由に呪文を 創ることができるのである。 魔法発動の間隔が短くなり、爆発が逃げ回るトリッシュへと徐々に迫る。 しかし、トリッシュは焦ることなく静かな眼でルイズを観察する。 彼女は仲間たちの敵スタンド使いとの戦闘の経験談や、自身の僅かながらの戦闘経験によって、 観察することの重要性を認識していた。 (ルイズの起こす爆発は……銃弾のように『なにか』を打ち出して…それが触れたものを… …爆発させる……その『なにか』が見えないって~のが怖いわね) 例えば炎が襲ってくれば回避や迎撃、防御などの選択肢が生まれるが、なにも見えず感じることもできない ルイズの魔法は、知らなければ防ぎようのない恐ろしい能力である。 事前にルイズのことを知らず、様子見の為に逃げ回ると決めたトリッシュは幸運であった。 「ほらほらどうしたの?もっと早く逃げないと追いついちゃうわよ!!」 向かって来ずに自分の周りを逃げ回るだけのトリッシュを見て、落ち着きを取り戻したルイズが 笑いながら魔法を唱える。余裕ができたのか、命中率も上がり始めていた。 だが、トリッシュは逃げ回るだけ。まるでなにかを待つように――― 「偉そうなこと言っといて逃げ回るだけ?所詮は…う、げほっ!」 トリッシュは、ルイズの精神力(授業で習った)が尽きるか、又は早口で呪文を唱える ルイズがむせて攻撃が途切れるのを、ずっと逃げながら待っていたのである。 体力にも限界がある為、いい加減近づこうと思っていた矢先であった。 「それを……待ってたわ!!」 ルイズが喉を押さえてむせている。この好機を逃すまいとトリッシュはルイズに向かって走る。 距離が縮まり、そのまま殴りかかる寸前にルイズが顔を上げる。笑っていた。 「引っ掛かったわね!」 ルイズの叫びと同時に、トリッシュの左足が、爆発した。